

#不動産取引と人の人生
不動産コラム 仲人の仕事(その①)
不動産の取引を「人の一生」にたとえると、いろいろなドラマがあって、意外としっくりきます。
不動産仲介(なこうど)を人生にたとえてみた、ちょっと切なくて、ちょっと笑える話です。
あなたのフドウサンは、今どんな「ご縁」を望んでいますか?
・ ・ ・
私は、不動産を介して幸せを繋ぐお手伝いをしている「ベテラン仲人」でございます。
不動産仲介歴30年、通称「トシさん」。
特徴は「少し、すれっからしなところがある」。
これまで数多くの縁談、もとい売買成約を手がけてきましたが、売主様への説明時の口ぐせは「買ってくださる方は、たった一人でいいんです」。
不動産仲介業というのは、人の人生にたとえるとわかりやすい仕事です。
物件を売りたい売主(花嫁・花婿)と、物件を買いたい買主(花婿・花嫁)のご縁を取り持つ、世話焼き婆さんの仲人とほぼ同じ。
長年の実績で培った鋭い人間観察力(通称:ジロリンチョ)と、強烈な行動力で、多数のカップルを成婚へ導いてきました。
「こちらの物件、おいくらで売りたいですか?」
──最初の査定という名の儀式
売却のご相談に来られるお客さまは、おおむね3タイプに分かれます。
タイプ1
「いくらで売れますか?」と不安そうな方。
タイプ2
「5,000万円以下なら売りません」と最初から値段が決まっている方。
タイプ3
多くを語らず、こちらを値踏みしている方(逆ジロリンチョ)。
口に出しづらいタイプの方もいるので、まずは売却される理由をうかがうようにしています。
他者からのご提案と
トシさんの心の声
売主:「○○不動産の担当者は、チャレンジ価格で売れると言っていました」
(では、スーパー・ウルトラ・チャレンジ価格で、やってみますか……)
売主「○○不動産の担当者は、このマンションを欲しい人が5組いると言っていました」
(レインズやSUUMOに広く情報公開すれば、欲しい方が50組に増えるかもしれませんよ……)
売主「○○不動産の担当者は、売れなかった場合は買い取ってくれると言っていました」
(チャレンジ価格で買い取ってくれる不動産屋さんは、存じ上げません……)
(お客さま……もしかすると、良いことばかり言われて、かえって疑心暗鬼になっていませんか。
とはいえ、何社にも話を聞けば、誰でもそうなってしまうのは当たり前のこと。
その”妄想とのご縁切り”へ導くのも、わたくしのお役目でございます)
占い師のはしご、ならぬ不動産会社のはしご
何社からも話を聞いているうちに「結局いくらが本当なの?」とわからなくなってしまう方がいらっしゃいます。
それはまるで「占い師のはしご」をした人のようです。
1軒目「あなたの恋愛運、絶好調です!」
2軒目「いや、ちょっと停滞期ですね……」
3軒目「これから運命の出会いが!」
結局どの占い師を信じればいいのかわからなくなって、財布だけが軽くなる。あれです。
不動産査定も、実は同じかもしれません。
A社「相場より高く売れます! 5,500万円でいけます」……ロマンス価格
B社「いや、今の市場だと5,000万円が現実的です」……成約想定価格
C社「うちなら6,000万円で売り出しましょう!」……お試し価格
どの会社にも「早く専任を取りたい」「とりあえず高めに言って気に入ってもらいたい」という”占い師なりの事情”があるので、提示価格にバラつきが出るのは、ある意味当然なんです。
大事なのは「気持ちいい数字」より「根拠」
チェックすべきは、誰が一番気持ちのいい数字を言ってくれたか、ではありません。
・その価格の根拠(直近の成約事例、地域の動向)がちゃんと示されているか
・「とりあえず高く言って、後で値下げ」という前提になっていないか
占いで言えば、星座や手相など”ちゃんとした理由”を説明してくれる占い師を選ぶ、みたいな感じですね。
市場相場という現実の川
失礼のないように、「そうですねえ、まずは査定金額をご覧になってください」とお伝えする。
これが売却仲人の第一歩です。
物件によっては、お客さまの希望額と市場価格のあいだに「市場の相場という、現実の川」が流れています。
この川は、ときにけっこう深く、そして冷たい。
その川を一緒に渡る介添えこそ、30年かけて磨いてきた芸術の域。
ただし、昨今の不動産価格高騰のおり、都心では稀に予測不能な高値で売れることもあるので、仲人トシさんの経験値という名の「引き出し」は、まだまだ増え続けています。
東京都心を中心としたマンション価格はバブル期を超える水準に達しており、どこまで高騰が続くかはわかりません。
「不動産価格はいつまで上がり続けますか?」とお客さまに聞かれたときの答えは、決まっています。
「山も谷も、過ぎ去ってみないとわからないものです……」
これも、トシさんの口ぐせです。
トシさんから一言
恋愛は人を盲目にし、結婚は視力を戻してくれると言います。
何社にも声をかけ話を聞いてみてください。
その際、不動産担当者には、その価格の根拠(直近の成約事例、地域の動向)をレインズの成約事例データなどで実際に見せてもらいましょう。
まずは実際に成約している事例をもとに、成約想定価格をきちんと把握してください。
また、売却物件の情報がどのように買いたい買主(花婿・花嫁)へ公開されて、今後成約の為にどのような活動をされるかなどの作戦会議を担当者としてください。
その上で成約想定価格をしっかり理解して、納得したうえで──そこに「のり代」という名の希望価格を、少しだけ上乗せしてみてはいかがでしょうか。
(218回)
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