「怪談(かいだん)長財布」
ある朝
道の真ん中に“長財布”が落ちていました。
パンパンに膨らんだ“長財布”は
怪しい雰囲気を醸し出しており
ヤクザ(反社)さん?
ホストのお兄さん?
そんな持主を想像させるのか
道行く人たちは気にはかけるものの
誰も拾いません。
そんな“長財布”が
私に何かを話しかけているような...
(こっちおいで~ こっちおいでよ~)
何か不思議な力に引き寄せられた
気がした 次の瞬間
怪しい“長財布”を手にした私は
来た道を駅前の交番まで
歩き出していたのです。
新型詐欺か?
闇バイトの仕込みか?
モニタリングか?
歩きながら色々なことをグルグル考え
交番に来てみるとお巡りさんは留守...
交番入口の緊急電話からけると
県警本部に繋がり
すぐ戻るので、待つようにとの指示
怪しげな“長財布”を
緊急用電話BOXの上に
置いて待っていると
駅前のローターに黒塗りの車が
猛スピードで入ってきました。
そして、交番前に急停止した途端
降りて来た男は交番に向かって
まっすぐ歩いて来ます。
やがてBOXの上に置いてある
“長財布”を見つけたのか
向かって来るスピードは加速します
よく見ると男の顔は
何かに取り憑かれたような
血の気の無い、青白い顔をしており
私に何か訴えようと近いて来た
次の瞬間
「こ、こ、これ、私のです...」
絞り出すような小さな声でした。
聞けば
近所の寿司屋本店の社長でした。
支店で寿司ネタが足りなくなった為
作業着のまま急いで届けに来た矢先
落としてしまい
真っ青になっていたようです。
やがてお巡りさんが戻り
立ち合いのもと
無事“長財布”を渡すことが出来ました。
安心した社長の表情は
大山の紅葉のような
華やかさを取り戻し
何度も何度もお礼を言い
頭を下げながら車に乗り込みました。
そして社長の乗った黒塗りの
古い小型車は
宍道湖に沈む夕日のように
小さくなって消えて行きました。
大山の紅葉
宍道湖の夕日
怪談作者の小泉八雲など
出張先(島根~鳥取)から帰ってきた翌朝に
山陰の地に思いを馳せながら歩いていた
ときの出来事でした。
しかし
一番の思い出は
小泉八雲の怪談(かいだん)よりも
妻が予約したお店のランチに
間に合うようにと
参道を死ぬ思いで上り下りした
大山寺の階段(かいだん)でした。
「ギャーーーーーッ」
(203回) #小泉八雲 #怪談 #大山寺 #宍道湖 #コウボパン小さじいち #浦和不動産 #不動産工房うらわ #不動産売却